第1章 春
ガラガラガラッ
教室の前の扉が開いて、一人の男子が入ってきた。
『…しょーちゃん…』
『めーちゃん、遅いからめっちゃ心配したで…どうしたん?』
しょーちゃんの本気で心配してくれる姿を見て、涙がこぼれそうになった。
…と、
『あんた、誰?』
と、岡田さんの声。
…うそ?岡田さん、前にしょーちゃんとりょーちゃんとすばる君が一緒にいたって話してたよね…
何でしょーちゃんの事が分からないの?
『あ、僕?僕は2組の安田章大です。』
いつも通り優しい笑顔で挨拶するしょーちゃん。
『…ふーん…今、藤瀧萌衣さんと大事な話してるんだから、ちょっと邪魔。あっち行って待ってなさいよ!』
…えぇ…?
この人、大丈夫?
本当にしょーちゃんの事が分からないんだ…
『…分かった、なら、外で待ってるわ。』
しょーちゃんが、本気で怒った時の抑揚の全くない冷たい言い方でそう言い放って、教室の前の扉を思いっきり開けた。
その瞬間…
一人の男子が扉の向こうに立っていた…
『…すばる君…』
眉間にしわをよせ、ポケットに手を突っ込んで、何も言わず岡田さんを斜め上から睨み付けた。
私が初めて見る、本当に怖いすばる君だった。
『…めーちゃん、行くぞ』
すばる君が私を顎でしゃくって呼んだ。
岡田さんを見ると…固まっていた。
憧れの渋谷先輩が目の前にいるのに、その渋谷先輩は自分を嫌ってる…
だいぶショックだったみたいだ。
私が教室から出て、扉を閉めると…
『ゥワァァァァァァァ…』
階段を下り始めても聞こえるくらいの叫び声が聞こえた…