第1章 春
すばるくん…渋谷すばるくんは、掴みどころのない人。
サラサラの黒髪は、小学生のときはポニーテールにしたり、編み込みしたり…女の子みたいだったけど、中学に入ったとたんにバッサリ切って、凄く短くなっちゃった…
整った眉毛、好奇心でキラキラしてる目…印象的過ぎて、会った人はすべてすばるくんのファンになるんじゃないかっていうくらい、魅力的な顔立ち。
軽音部でバンドを掛け持ちしてボーカルをやってるだけあって、歌が上手く、女子人気もすごくて、ファンクラブもある…らしいんだけど…
わたしの中では、掴みどころのないおじいちゃん、もしくは『小っさいオッサン』…今でもしょーちゃんと同じくらいの身長。
突然マルちゃんやたつ、しょーちゃんを捕まえて、即興コントをしたり、信ちゃんやきみくんと思いっきりじゃれ合ったり…スイッチが入ると、暴走機関車のように誰にも止められなくなる。
かと思えば、突然、本当に突然無口になって、わたしたちが話しかけると『うるさい!』と怒られたり…
さらに機嫌が悪いと、すぐにわたしの事を無視するし…
小学生の時は、公園で遊ぶと真っ先に『あぁ、しんど…』と遊びの輪から脱落するくらい虚弱だったけど、中学に入ってからは、バンドのボーカルとしてのプライドなのか、毎日筋トレをしてるから、今はいわゆる細マッチョ。
あと…下ネタが始まるのは、いつもすばるくんから。
わたしが『もー、やめてよ///』と言えば言うほど、エンジンがかかる…本っ当にやめてほしい…
可愛い女の子を見つける嗅覚も、すばるくんが断トツ。
何となく…何だかなって思う…