第1章 春
きみくん…横山侯隆くんは、三人の中でブレーン的存在。
中学に入ってからは、「ゆう」「ゆうくん」って呼ばれてる。
去年の担任の先生から『君の名前、何か難しいから、ゆうって呼ぶね』と、勝手にあだ名をつけられたらしい。
だから、中学に入ってからの友達は、みんな「ゆう」「ゆうくん」って呼ぶみたい。
あと、何かやろうとするときは、必ずきみくんが企画する。
勉強も出来て、おしゃべり上手で、しっかりしてるし、きちんとしてるから、一年の時から生徒会の書記をやってる。
多分そのうち、生徒会長になるんだろうな…
背が信ちゃんと同じくらい高く、顔も、女子もうらやむプックリ唇にスッと通った鼻筋、真ん丸な二重の目…そして『美白王子』の異名をとるほどの、キメの細かい色白肌…
わたしのお母さんがあまりのきみくんの可愛さに、一度だけ冗談でお化粧したら…
『まぁ、しょーちゃんとどっちが可愛いかしら…』
ってウットリしてた…
…わたしとは比べてくれないのね…
でも…わたしたちの中では一番のポンコツ…
駄菓子屋に行って必ずおさいふを無くす、塾の帰りに自転車の鍵…というより、自転車の鍵を入れてたおさいふを無くす、この間なんて生徒会室で企画書を無くす…このときはすぐに見つかって…でも今の生徒会長さんにキレられたらしいけど。
中学に入ってからは、しょっちゅう携帯とさいふを同時に無くすので
『ケータイあらへん、さいふもあらへん、ケータイ、ケータイ、ケータイ、さいふ、さいふ、さいふ』
なんて歌いながらグルグルまわるから、
『お前、真剣に探してんの?』
と、みんなからよく突っ込まれてる。