第1章 春
大通りを渡って、コンビニの角を曲がったところで、背の高い怪しい二人組を捕獲。
片方がしょーもないギャグを連発して、もう片方が半径1kmに届くんじゃないかくらいの大声で
『あーっはっは…もー…あかんてぇ、マルちゃん…あーっはっは…』
と、手を叩きながら爆笑してる…
マルちゃんこと丸山隆平と、たつこと大倉忠義…
正直、仲いいのか悪いのか…しょっちゅう口喧嘩するくせに、結局いつも一緒の二人。
マルちゃんは、自分のことを『ピエロ』と呼ぶ。
『俺は周りをハッピーにさせたいだけ、自分が傷付いてもかまわない』
って言って、いつもしょーもない事をいう。
でも、一度泣いたのを見た事がある。
実は私たちは9人だった。
五年生の時、私たちの中では一番普通でモテてた男の子が、北海道に引越してしまった。
その時に、心ない一部の女子が『うるさい丸山がいなくなれば良かったのに…』と陰口を叩き始めたのをきっかけに、若干いじめっぽくなった事がある。
言われなきいじめを受けたマルちゃんは、いじめをしてた女子のリーダーに『何かゴメンなぁ…』と言いに行ったんだ…
さすがにいじめをしてた女子たちも悪かったと反省して、その日からいじめは無くなったけど…戻ってきたマルちゃんは大声で、涙が枯れるまで泣き続け…その日から、しばらくの間笑わなくなった。
でも、引きこもりがちになったマルちゃんを、みんなで無理やり公園に連れ出して遊び続けた結果、1ヶ月もすると、徐々に笑顔が戻ってきた。
そんなマルちゃんが『救いの手』と呼ぶのが、すぐに大笑いする、たつ。
たつは五年生までは小さくて可愛い♪と、モテモテだったけど、五年生の夏休みから急速に身長が伸びはじめ、急に『大倉くんって意外とイケメン♪』と大騒ぎに。
それ以来、ファンクラブが出来た…らしい(私はよく知らないけど…)。
たしかにウェーブのかかった髪、『とろけるような』笑顔…くったくのない笑い声…
これにだまされる子も多いみたいだけど、わたしたちの中では通称『大食いのへたれ王子』。
りょーちゃんの次に『嫌やぁ』とだだをこねる事が多い。
大食いに関しては、凄まじい。
ある日、8人でスナック菓子を10袋くらい開けちゃった時、みんな途中で飽きて食べるのを止める中、一人で『任しとかんかい!』と完食してしまった…
だから、お腹がプヨプヨ…
