第1章 春
しょーちゃんが曲がり角を曲がったから、慌てて曲がっ…た…のに、少し先まで走っても、しょーちゃんが見当たらない…
『小さすぎて、見落としたか…』
思わず呟いたその時…
バッチ~~~~ン…
思いっきり頭を叩かれた…
あまりの痛さにうずくまると、
『何してん、お前?俺ら置いて走り去るとか、アホちゃうか?』
頭の上からハスキーボイス…
…この憎まれ口は…
ふり返ると、見慣れたニヒルな笑顔…
『りょーちゃん、全力で叩かなくてもよくない?』
りょーちゃん…こと錦戸亮。
身長はわたしと同じくらいなんだけど、スポーツ万能で、水泳で鍛えた体は男らしささえ感じる。
涼しげな目、スッと通った鼻筋、目の下の泣きぼくろ…さらっさらの髪の毛…うん、黙ってたら校内イケメンランキングtop10に必ず食い込んでくるよね。
その上、言いたい事は相手が誰であってもはっきり言うし、頭もいいから、正直頼もしい存在なんだけど…
でも、性格が、とにかく、ドS。
クラスの他の女子からも『りょーちゃん、ドS王子じゃなかったら、絶対モテるのに…』とか『顔だけだったら、りょーちゃんが一番だよね~』とか言われるほどのドSっぷり。
でも、私は知ってる。
私たちの中では『末っ子』と呼ばれるくらい、甘えん坊で、意見が通らないとすぐ拗ねるんだけど、『俺が、こん中で一番皆の事が好き!!!』と恥ずかしげもなく言えちゃうくらい、熱い一面も持ってる。
わたしたちも、りょーちゃんがいるから、結構上手くいくのかも。
『…何やねん』
突然、りょーちゃんに声かけられて、ビクッとする。
あ、りょーちゃんのこと、無意識に見つめてたかも…
『…ご、ごめん…』
『どーせまた、「これで、性格が良ければねぇ…」とか思うてたんやろ?余計なお世話じゃ!つーか、お前が言うな!』
そう捨て台詞を吐くと、ドスドスと大股で、りょーちゃんが先にいく…
『相変わらず、分かりやすい照れ隠しやねぇ…』
『ホント…素直じゃないよね…』
しょーちゃんと二人でしみじみ…そして爆笑!
『待って、りょーちゃぁん!』
二人でりょーちゃんを追う。