第1章 春
『めーちゃん、おはよっ!迎え来たで!』
しょーちゃんが、女子顔負けの甲高い声で玄関の前で大声あげてる…
『しょーちゃん、おーきな声で呼ばないでよー!今行くからぁ!!!』
わたしも思わず大声で返す。
わたし、藤瀧萌衣は、今日から中学生の12歳。
大阪には年長組の時に横浜から引っ越して来たんだけど、お父さんとお母さんが未だにこっちの言葉を使わないから、なんとなくわたしも、こっちの言葉では話さなくなってしまった。
それをみた一部の人からは『気取ってる』といじめられたけど、それを助けてくれたのが、しょーちゃんと、あと6人…合わせて7人の男子だった。
しょーちゃん、こと安田章大は、わたしのとなりに住む同い年。
とってもとってもしっかりした、すごく頼れる男子…なんだけど…
…ま、いいか。今言わなくても、後で分かるし…
『じゃあ、おかーさん、行ってきまーす‼』
慌てて玄関のドアを開けると…あれ?しょーちゃんがいない…
『しょーちゃん、どこ?』
『…めーちゃん…危ないて…も少しでドアに挟まるとこやったわ…』
ドアの影からヨロヨロっと、しょーちゃんが出てきた…
『ゴメーン…………ブッッッ…』
謝りながらも、つい吹き出してしまう。
わたしより低い身長、ヒョロッとした体型…そして…男子にしておくのがもったいないくらいの整った可愛い顔に柔らかく茶色い髪‼
おととい髪を短~く切ったから、なんとか男子だって分かるけど、小学生のときはマッシュルームカットだったし、女子が着ても可愛いような服やバッグを好んで身に付けてたから(放っておくと、しょーちゃんのお姉さんのスカートとかも学校に履いてきちゃうから)、女子と間違われて誘拐されそうになったのも一度や二度じゃない。
そんなしょーちゃんが男子の制服を着てるのは、何だかすごい違和感で…もう、笑いがとまらなくって…
『もーえぇわ、俺、先行くし…』
私の反応でキレたしょーちゃん、スタスタと先に歩いて行ってしまった…
『ゴーメーンーねーーーーーー‼しょーちゃん、待ってーーーーーー‼』
慌てて追いかける。
追いかけ始めたら、しょーちゃん、突然ダッシュし始めた!!!
『もぅ…待ってよぉ…しょーちゃぁん!!!』
負けずにわたしも追いかける。
次の曲がり角を曲がったところで、二人目の友達が待ってるのを忘れて…
