第2章 管理人
紗織side
目の前にあるのはアパートほどの部屋数しかないけど高価そうなマンション。
高層ビルとまではいかないほどで、階数は両手に収まる。
【星寮(ほしりょう)】
と書かれた表札が石門にかけられていて、池や小さな菜園スペース、花壇がある庭を越えた先には自動で開く建物の入り口があった。
うん…やっぱり、おかしいよね。これ。
遡ること数日前。ーーー
いつまでも就職先を見つけないわたしを見兼ね、お母さんが求人雑誌を幾つか買ってきた。
っていっても、わたしは真新しいそれを放置したまま自然とパソコンに向き合ってイヤホンをつける毎日。
結局声優さんにしか興味はわかないわけで、ニート以外で声優と関わることができるような仕事には、今更すぎるほどスキルの不足が目立つ。
もう数日の間だけ。どうせ就職したら自由な時間は減るんだから……。
まあ、そんなわたしにお母さんが大激怒したわけで……。
一週間以内にバイトでもいいから就職先見つけなかったら家を追い出すって。
そんな無理な。