第6章 報酬は水色のアイス
相手にとって予想外だったのは、当時の私がちょうどみっちゃんから借りた少女漫画にハマっていて、嫌がらせの数々を「フィクションじゃなかった! ホントにこういうことやる人いるんだね!」とやや興奮気味に受け止めたことだろうか。
机に「退部しないと殺す」という手書きの手紙があれば「具体的にどう殺すのかな? 適当すぎて手抜き感半端ないね」と音読した後に爆笑し、上履きに何かされようものなら、あらかじめ自分でやたらリアルな蛇やサソリの玩具を入れておいて、いじろうとした犯人に逆に悲鳴を挙げさせることに成功した。成果があまりに芳しかったものだから、アイデア提供者の赤也くんにはガリガリ君をおごってあげた。
そういう撃退法を面白おかしく吹聴して回っていたら、いつの間にやらトイレに呼び出されるまでにエスカレートしたので、ペンの形をした小型カメラ(新聞の誌上通販で手に入れた)をポケットに装備していそいそと赴いた。おかげであっさり犯人の面が割れたうえに証拠もゲットできたので、犯人たちを逆に呼び出すことになったのだった。
正直言うと、証拠を提出してしまえば手っ取り早く済んだのかも知れない。でも、学校の不祥事のせいで部の皆に迷惑が掛かるかもしれない。それだけは嫌だった。
よし、先生に頼らず自力で平和的に解決しようじゃないか、と思い立った私は、中学のレアな経験の記念としてカメラで撮影しながら、誠心誠意、かつ懇切丁寧に、こういうのやめてね、と「お話」させていただくことにした。
どうやら犯人たちは皆してボケが始まっていたようなので、写真や映像を使って、自分たちがしたことを徹底的に思い出せるようお手伝いをさせてもらったら、同席していたみっちゃんにはドン引きされた。解せぬ。