第7章 チューイングガム(何味でも可)
このゲーセンは他よりも少し規模が大きくて、特にプリクラコーナーが充実している。
だから学校帰りの女子生徒や、カップルなんかによく出くわすのだが、格ゲーの対戦に興じている中学生の男女なんかは、やっぱり珍しいのだろう。
時折プレイ中に視線を感じて、赤也くんとの対戦は、見事に全敗に終わった。回り込みからの反撃が下手くそだったのが敗因じゃないはずだ。たぶん。
その後は、赤也くんがオンラインで全国の猛者どもと戦う様を応援してみたり、ターンテーブルに乗っている景品をクレーンでスライドテーブルに乗せて、押し出された景品を貰えるというゲーム。あれで大量にチューインガムを入手したうえ、クレーンゲームでは、うんまい棒のお徳用までゲットした。
が、この量を二人で食べるのも侘しいということになって、結局両方ともブン太にあげることになった。
切原家と学校は近いはずなのに、律儀に駅まで送ってくれた赤也くんは、良い子だと思う。
なので英語はみっちり鍛えてやろう。
お徳用うんまい棒、一パック三十本入りを小脇に抱え、電車に揺られながら、私はひそかにそう決意した。