第6章 報酬は水色のアイス
結果は和解という形で納まり、犯人さんが常識のある人で助かった、と胸を撫で下ろしたのは、夏休みにさしかかろうかという頃である。
その後の処理はというと、落書きされた机も綺麗なものに取り替えるだけで済み、制服はクリーニングに出す羽目になったが、そのお代は「お話」の結果、犯人さん側のおごりということで実質タダだった。
教科書の類はというと、毎日家に持ち帰っていたので全くの無傷で済んだ。
真相は、最初のうちに辞めていった元マネージャーたちが、好みのレギュラーと親しげなマネージャーを妬んで追い込んだ、というこれまたベッタベタな物だった。これなんて少女漫画?
「それじゃ、自分はお近づきになれないじゃん。バレたら嫌われるし、あんまり意味無くない?」とはみっちゃんの弁である。ごもっともです。
……とまぁ以上が大体幸村君のいう「前例」だ。
要はその件で恨みを買って、また何かされたんじゃないの? それで遅刻したんでしょう、と心配してくれたわけだ。この手のことには敏感なのも、陰口の類を嫌う彼らしいと言うべきだろうか。
余談だが、去年の海原祭で部がやった演劇のキャストが男子のみだったのも、実はこういう事態への配慮あってのことである。
『心配してくれてありがたいんだけど、私は巻き込まれただけ、っていうか』
「そうなのかい?」
『うん、知り合いに恋人ができてさ、その子がちょっと、私の前例みたいな目に遭ってた、と言いますか……』
言葉尻がだんだんはっきりしなくなっているのは、主に幸村君のせいである。
やめてやめて。そんな静かに怒らないで。心臓に悪い。