第5章 思い出のショートケーキ
『んー……?』
気が付けば目の前には白い天井。こちらをのぞき込む顔と目があって、そういえば保健室で寝ていたことを思い出す。
「いつまで寝てんだよ、帰るぞ」
『あー、ブンちゃん? 昼休み終わったの……?』
「その呼び方やめろっての。それから、もう部活も終わった」
『え!?』
「真田には話してある」
それを聞いて冷水を浴びたように目が覚めた。慌てて跳ね起きると、カーテンの向こうから顔を出した保険の先生に、静かにしなさいと身振りで伝えられて、ぺこりと頭を下げた。
『あ、すいません……』
「これ荷物と着替えな。昇降口で待ってっから。ジャッカルも待ってるし、早くしろよ」
『どーも。……あ』
呆れたようなため息が降ってきて、むっとしてそちらを睨みつける。ふと違和感を覚えてまじまじと見ると、ワイシャツのボタンが掛け違っているのに気づいた。
『ブン太、ちょっと』
「なんだよ」
意外とそそっかしいんだよなぁと思いながらちょいちょいと手招いて、ベッド脇の椅子に座らせる。面倒そうな表情のほっぺを引っ張ってやりたい衝動に駆られたが、そこはぐっと我慢した。
『じっとしてて』
「え」
邪魔なネクタイの先端を胸ポケットに入れたら、何故か肩が強ばったのがわかった。いつだったか、怒ってネクタイ引っ張ったのを思い出したのかなと考えながら、掛け違えたボタンを直そうと下へぷちぷち外していく。本当は上にやったほうが早いけど、ネクタイの結び目があるから仕方ない。