第5章 思い出のショートケーキ
「かあさんは、おれよりおとうとのほうがだいじなんだ」
『そうなの?』
大好きなショートケーキにも手をつけず、目の前の男の子はしょんぼりとうなだれていた。
「ふうかはきょうだいがいないから、わかんねーんだよ」
そう言って口を尖らしているのは、小さい頃の幼馴染だった。そして相対している私も、まだ小学校低学年位の姿だ。
お隣の家に二人目の子供ができたと聞いて、お母さんがこぼした言葉の意味を、幼いながらもぼんやりと理解した記憶がある。
『おかあさんがいってたけど、ブンちゃんさびしいの?』
聞けばだんまりを決め込む幼馴染に、そうなんだーと言って怒らせたのも懐かしい。「ちげーよバカ!」と言われたのにカチンときて、結局つかみ合いの大喧嘩になったっけ。
その後膝を並べて叱られたことまでぼんやりと思い出したら
「――起きろっつの」
ぺしりと額を軽くはたかれる感触に、目を覚ました。