第4章 熱気を食らう
「どうしたよ、集合掛かってんぞ」
「あー丸井、風華が具合悪いって」
軽い駆け足の音の後に、こちらの様子に気付いてやってきたらしいブン太の声が耳に届く。
「マジ? だからさっき食えって言ったんだよ」
『うるさ……ぶっ』
険のある声音にむっとして、思わず反論しようと上げた顔に、ばさりとなにやら掛けられた。一瞬混乱してよく見ると、さっきまでブン太が着ていたジャージの上着だ。わけがわからずぱちくりしていると、さらにブン太は続ける。
「それ頭からかぶっとけ、日に当たりすぎたんだろぃ。御堂、俺こいつ保健室につれてくから、後シクヨロ」
「わかった。先生に伝えとくね」
「おう。……風華、立てるか?」
差し伸べられた手を3秒くらいぼさーっと眺めて、ハッと我に返った。ブン太って、こんな頼りがいある奴だったろうか。
暑さと痛みに頭がやられて、ずいぶん馬鹿になっているらしい。妙なことを考えたと思いつつ、こくりと肯いてごつごつした手を取る。力強くぐいと引っ張られて立ち上がったが、やっぱりふらついた。
『……ありがと』
「ふらふらしてんじゃねぇか」
『元からだし』
「あーそうですか。ほら、早くしねぇと食券売り切れっだろぃ、とっとと行くぞ」
冗談をスルーして背中を向けてきたので、おとなしく乗っかっておく。赤い猫っ毛からは、わずかに整髪料の匂いがした。