第6章 傷 【青峰】
慌てふためくゆり。
「今のは…忘れて…」
シュウゥウっと音が聞こえて来そうなほど
顔を赤らめたゆりは無意識なのか
そうでないのか、俺の胸に顔を埋めた。
「ちゃんと…別れるって言いたかったの…!」
ゆりの声が胸に直接響いて
俺は心地よさを感じる。
「中途半端だし、傷だらけだし、何もできない
私だけど…それでもいいなら…」
俺は全神経を耳に集中して、言葉を待つ。
「私も…青が好き…」
俺の背中にそっと腕を回すゆり。
「ああ…俺もだ…。俺が大事にすっから…」
俺たちは互いの熱をいつまでも感じていた。
―1ヶ月後…―
「大ちゃん!今日部活来るよね!?」
…今日もうるせぇのが来た。
「行かねえに決まってんだろ。」
「だーめ!来て!じゃないと私が怒られちゃう!
ねぇ!ゆりも何か言ってやってよ!」
さつきのうるささは相変わらずだ。
「ん〜?そーだね…青。今日部活出なよ?」
ゆりまでさつきの味方に付きやがった。
「あぁ?お前、一緒帰るって約束だっただろーが」
「部活終わるまで待っとくから。ね?」
首を傾げて上目遣いでの説得…
ったく、誰に教わるんだよ、んなこと。
「ちっ…!おら、さつき、さっさと行くぞ!」
カバンを持って教室を出て行く俺とさつき。
「あ!ちょっと、大ちゃん!」
バタバタと追いかけてくるさつきを後ろに
階段を降りていると、ケータイが震える。
「あ?」
見れば、ゆりからのメッセージ。
「“今日部活終わったら家来る?”」
俺は一気に顔が熱くなった。
「“んだよ。誘ってんのか?”」
俺が返せばすぐに返事が来る。
「“青がいいなら…いいんじゃない?笑”」
「なっ…!…ったく」
思わず口に出してしまった。
「なになに〜?どーしたの、大ちゃん?」
後ろからニヤニヤしたさつきが尋ねてくる。
「うるせーよ、ブス。」
「ブスってなによー!この巨乳好きの
変態ガングロー!」
ぎゃーぎゃー言っているさつきを横目に
俺もすぐに返事を返す。
「“どーなっても知らねえからな。”」
すると再びケータイが震える。
「“青となら…いいよ”」
俺はそれを読むだけして、ポケットにしまった。