第6章 傷 【青峰】
青峰SIDE
「(だりぃ…今日もサボるか…)」
退屈な授業が終わりを告げ、俺は荷物をまとめる。
「あっ!青峰くん!部活は!?」
さつきがすぐさま教室に飛び込んで来て
いつものようにぎゃーぎゃーと騒ぎ出す。
「…るっせーな。行かねーに決まってんだろ。」
俺は無視して教室を出て行こうとする。
向かう先はいつもの屋上だ。
すると、俺の隣の席からクスッと笑い声が聞こえた。
声の方を振り返ると、ゆりが口元を抑えて
笑っていた。
「…なんだよ」
俺が短く尋ねると、こいつは ああ…と目を伏せて答える。
「いや…さつきもいつも大変だなって。
あんまり部活サボリすぎちゃダメだよ?」
そう言うとゆりは荷物をまとめ始めた。
「もー!!ゆりは青峰くんに甘すぎ!
もっと言ってやってよー!」
さつきがまたぎゃんぎゃん叫んでいる。
「いやいや…私、バスケ部じゃないし…
行ってもやる気ないなら意味無いかなっても思うし…
まぁ、サボリもほどほどにね?青。」
目を細めて笑いかけてくるゆりに、俺の
心臓が早鐘を打ち始める。
少し前に気付いた。
俺はこいつが好きなんだ…
なんて言うか…守ってやりたくなる。
儚い雰囲気を持っていて、どことなく掴めない。
さつきを通して話すうちに俺は多分、どんどん
惹かれて行ってたんだと思う。
気が付くといつもゆりの事を考えている時がある。
でも、どうしても引っかかる事があった。
こいつには2つ年上の彼氏がいる。
入学からしばらく経って、告られたと聞いた。
それから関係が続いているとさつきから聞いていた為、
俺は自身の気持ちを伝えるような事はしていない。
こいつが笑っているならそれが一番いい。
そう思ってたから…
「ゆり、帰るのか?」
「ん?うん。今日は先輩も塾だからね。
今から約束もないし、帰るよ?」
まださつきが何か言っていたが、俺はほとんど
聞かずにゆりと話す。
「それなら俺も出るから途中まで一緒行こうぜ。」
「別に構わないけど、明日はちゃんと部活出る?」
「……考えとくわ」
俺が短く答えると、ゆりは困ったように
片眉を下げてさつきに言った。