第5章 努力 【宮地】
おまけ2
ゆりSIDE
「そーいやお前、よく男に勝てたな」
部活の後、スタメンメンバーと裕也と私で
帰り道を歩いていると、
キヨがおもむろに私に尋ねる。
「あんな男、楽勝なのだよ」
私は緑間の真似をしてメガネを上げる
素振りと共にキヨを見上げる。
「ゆりさん、真似をしないでほしいのだよ」
冷静なツッコミを入れてくる緑間。
「え~?でも似てるでしょ?」
私はくすくす笑いながら話す。
「全然似ていなかったのだよ」
あくまで態度を変えない緑間に対して
隣を歩いている高尾が吹き出した。
「ブフォッ!ごめん、真ちゃん、そっくりだから!」
「黙れ高尾。」
いつものやりとりに思わず口角が上がってしまう。
「いや、いいから答えろよ。刺すぞ。」
私は あ。 と声を漏らして苦笑いを浮かべる。
「言ってなかったっけ?私空手昔習ってて、
3段って。だから楽勝だったのだよ」
再び緑間の真似をしてみたが、誰もツッこんで来ない。
「え…なんか変な事言った…?」
私が首を傾げると、みんな表情を青くして
口をポカンと開けている。
「お前…まじかっ!」
「そりゃ勝てねえわ!」
「ブフォッ!空手3段って知らずに挑むとかっ!!」
「面と向かって絶対勝てねえな。」
「ここ最近で一番驚いたのだよ…」
「お前…危ねえな…」
口々に言うメンバー。
すると、裕也が思いついたように言う。
「なら、今日はどんな技使ったんだ?」
私が目を丸くする。
「ちょ、高尾で試してみて。」
裕也が高尾の背中を押す。
「ちょ!宮地さん!やだ!死ぬ!!」
「いや…本気でしませんから(・_・;)」
私が高尾の正面に回る。
「高尾、まっすぐパンチ出してみて。」
「結局俺っすか?!」
渋々私にゆっくりと拳を突き出してくる高尾。
「こう、ストレートで来たら…」
私は高尾の振り抜くであろう腕の手首を
ギュッと掴み、外向きに力を入れながら引き、
空いた手で拳を作り、掴んだ手の内側部分に
拳を当てる構えをする。
「…こう。」
私がみんなの顔を見る。
「なるほど…」
「こわっ!」
絶対何があってもゆりとは喧嘩は
したくないと心に決める秀徳メンバーだった。
FIN