第5章 努力 【宮地】
「だから…許せなかった…私の事なんかより、
みんなの事バカみたいに言わせた自分が
情けなく………てっ…」
俺はゆりが話している途中で細い腕を優しく
引き寄せて胸に収める。
「わかってるよ…悔しかったんだな…」
宥めるように後頭部を優しく叩いてやれば、
ギュウッと俺の胸に顔を埋めるゆり。
そして、素直にこくんと頷いた。
「大丈夫だよ、別に気にしてなんかねえし。
お前が落ち込んでるの見る方がよっぽど辛ぇわ」
からかうように言えば、またゆりが1つ頷く。
「大坪も木村も驚いてたわ。まさかそんな事で
あんな派手に喧嘩してるなんて思わねえし」
そんだけ俺らの事、考えてくれてるって
ことなんだけどな…
すると、部活用のTシャツが僅かに濡れる気配。
細い肩が震えているのに気がつく。
「んな、泣く必要ねえよ。」
顔を見なくても分かる。
こいつは俺達に迷惑かけたと思って
自分を責めてるはずだ。
「ごめ…もう…嫌いになった?」
鼻を啜りながら涙声で尋ねてくるゆり。
「バカ、なんで嫌いになんだよ。撲殺すんぞ。」
俺も毒は吐いてみるものの、なんとなく覇気がなくなる。
毒気を抜かれるってこう言う事なんだろう。
「ふふ…キヨ、覇気がない」
いつもの笑い声に戻りつつあるゆり。
「…お前といると、調子狂うんだよ」
俺が照れてしまって、顔が見えないように
こいつを抱き締めれば、また肩を僅かに震わせて
笑っているのを感じる。
「じゃあ…もう別れる…?」
悪戯っぽく尋ねてくるゆり。
「あ〝?なんでそーなんだよ?」
思わぬ言葉にドスの効いた声で返事をしてしまう。
「ふふっ…ごめん、冗談です…」
笑いを堪えるのは結構だが、俺はムスッとして
眉間に皺を寄せる。
「ねえ…キヨ?」
顔を見上げて来るゆりに俺は不意に熱い唇を落とした。
「んっ…?!」
反射で閉じられてしまっているそれをツツッと
舌でなぞってやれば、薄く開く唇。
「んっ…んふっ…んぁ…」
厭らしくお互いの舌が絡み合って、縺れる。
ゆりの身体を締め上げるようにきつく抱き締めて
口の中を蹂躙してやれば、段々とこいつは1人じゃ
立てなくなってくる。