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黒子のバスケ 短編集☆彡

第4章 嫉妬 【福井】


「……っ!?」

予想外のゆりの行動に、今度は俺が動揺した。

早鐘を打つ鼓動が伝わってくる。

俺の心臓もこれ以上ない程早く動いている。

甘えるように俺の肩口に顔を埋めるゆりに

理性が吹っ飛びそうになる。

「福井くん…あったかい…」

肩口に顔を埋めているせいか、ゆりの口から

紡がれる言葉が、俺の身体に僅かに痺れを走らせる。

「福井くんの心臓…早い…ね」

少しからかうような笑いを含んだ声が俺の鼓膜を揺らす。

「それはっ…お前もだろっ…」

極度の緊張から、途切れ途切れで答えてしまう。

「ん…私もすごく…ドキドキしてる…」

甘えたような口調で答えるゆりに、

俺はもう気持ちが抑えられなくなってしまっていた。

「あのさ…こんなことしてっから、もうわかってっと

思うんだけど…」

「ん…なぁに?」

俺は意を決して、口を開く。

「…好きだ」

短く気持ちを伝えた。

しばらくの沈黙が流れて、俺は答えを待つ。

「私…今まで人を好きになんか、なったことなかったの」

抱き合ったまま、ゆりが俺に告げる。

「でも、福井くんに出会って、このくすぐったい気持ちが

なんなのか、やっとわかった…」

ギュッと、ゆりの腕に力が入る。

「私も…福井くんが好きです。」

力を込めた細い腕が僅かに震えているのがわかる。

俺も、ゆりの存在を確かめるように

ギュッと抱きしめる。

「あぁ~…分かってた事だけど、やっぱ

緊張するもんだな~…」

今度は俺がゆりの肩に身を屈めるようにして

額を乗せる。

「ふふ…福井くんも緊張とかするの…?」

悪戯っぽく聞いてくるゆり。

生憎顔は見えないが、いつものように

ふにゃぁっと音が聞こえそうなほど微笑んでいるんだろう。

「バカ…俺だって緊張くらいするわ」

少しだけムッとして、言い返せば、

まだ震えているゆりの背中。

「お前なぁ…いつまで笑って―…」

いつまで笑ってんだ、そう言ってやろうと思って

少しだけ離した身体。

そして、ただ笑っているだろうと思って覗きこんだ

ゆりの目には、涙が光っていた。

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