第4章 嫉妬 【福井】
「違うけど…何?」
俺はまたこいつに意地悪を仕掛ける。
すると、こいつは手の甲で口元を隠しながら、
「だって…まだ慣れなくて…恥ずかしい…」
とか言いやがる。
「お前…ほんとかわいいな。お前手放すとか…
悪りぃけど、死んでも無理だ」
俺はそう言って、敦のジャージを脱がす。
キャミソールとハーフパンツとハイソックスに
なったゆり。秋田に住んでいれば夏も海や
プールなんかにはそうそう行かねぇし、
露出の多い服はほっとんど着ねえから、こいつの
肌は眩しいくらい白い。
肩まである銀色の髪と白い肌はよく似合う。
初めて会ったとき、無理やり黒く染めてるのわかって
俺がやめろって言ったんだよな…本人はこの銀髪の
せいでガキの頃ははぶられたことがあるって言ってた…
『俺はその髪、すげぇ綺麗だと思うけど。』
忘れもしない、俺が髪の事で悩むこいつに言った言葉。
そん時はもう2人で会うようになってたか…?
周りからは付き合ってるのかとか、そんなことばかり
聞かれた。それはゆりも同じだったみたいで。
ゆりはかなりモテるし、女子からの人気も高い。
だから、俺みたいなやつより、氷室みたいな男が
お似合いだなんだと言われていた時期もあった。
でも、『福井との噂は肯定も否定もしなかったのに、
他の男の話をされた時は「それはない」ときっぱり
否定していたアル。』
と、随分前に劉から報告されたことがある。
想いを伝えたのは、俺が先で。
去年の文化祭の日だった。
人混みに疲れた俺は、屋上へと脚を運んだ。
普段は人がまばらにいたりするこの場所も、
こういう騒がしいイベントの時は決まって静かで。
扉を開ければ爽やかな風が体を吹き抜ける。
眩しい西日に目を細めれば、ふと目の前のフェンスに
見覚えのある後ろ姿があった。
「ゆり?」
名前を呼ぶと西日に反射した銀色の髪を風になびかせながら
ゆりはゆっくりと振り返った。
「…福井くん?」
誰かは分かってるのに、わざわざ疑問形で返事をするゆり。
「なんで疑問形なんだよ」
笑って答えて顔を見れば、なんとなく疲れた顔をしている。