第4章 嫉妬 【福井】
福井SIDE
「…で、敦のジャージを借りたのか」
ベッドに座ったまま、デスクチェアに腰掛けた
ゆりに向かって尋ねる。
「…そうです」
怒られると思っているのか、頭を下げて項垂れたまま。
「……別に怒ってるわけじゃねぇよ」
さすがにこれは顔合わせては言えなくて、
俺もベッドに横になりながらだったが、そう伝えた。
「……でも、さっきいらいらしてた」
顔色を伺うようにゆりが少し顔を上げる。
図星を突かれて、今度は自分が赤くなるのが分かった。
「それはっ…」
言い淀む俺にゆりは顔を上げて首を傾げている。
きょとんとした顔。小さな顔には大きすぎるんじゃ
ないかと思うくらい大きな目。
なんだか俺の方が恥ずかしくなってきて、
近くにあった自分の部屋着を投げた。
「これに着替えろ。」
「え…でも…」
困ったような声色。
チラッと顔色を伺えば、困ったような声とは
対照的な嬉しそうに綻んだ顔。
「何ニヤニヤしてんだよ…」
聞けば、自分で気が付いていなかったのか、
ハッと真顔に戻る。
…まぁ、元々からかいたくなるくらいの
困り顔なんだけどな。
そんなとこにも惚れたんだけど。
そう思ってずっとコイツを見ていても、
一向に着替える気配もなく、ただ受け取った
俺の部屋着を抱えている。
「んだよ…早く着替えろよ」
「ん…だって、これ、健の匂いがする…」
ふにゃぁっと効果音が聞こえて来そうなほど
緩んだ笑顔で俺に言うと、俺の部屋着を
ギュッと抱きしめた。
「なっ…!お前…」
…やられた。こいつは時々、こうやって不意に
爆弾を投下してくるんだった…
カッと音がしたかのように俺が赤くなる。
「…ハァ。もーいいわ。ちょっとこっち来い。」
ゆりは俺の言葉に少し首を傾げていたが、
やがて椅子から立ち上がって、俺のまん前に立った。
俺は起き上がりベッドから脚だけ下ろしてゆりと向き合う
格好になった。
「健…」
すると、小さな声でゆりが俺の名前を呼ぶ。
「ん?」
俺が座ってるわけだから、どうしても見上げる形になる。
「ごめんなさい…」
小さな声で謝るゆり。
「んだよ、急に…」