第4章 嫉妬 【福井】
「おまっ…なんだよその格好?!」
俺が近寄れば、ゆりはこちらに気付き、
頬を赤く染める。
「あっ…違うの、健!これはちょっと…
理由があって…///」
なんで照れながら喋るんだよ…
まさか、敦と何かあったのか!?
長く余った袖とハーフパンツまですっぽり覆われた
身体、膝下まできっちり上げられたハイソックスが
なんだか妙に誘ってるように見えて…
逆に見てる俺が変な気を起こしそうだ。
おまけにこの照れ顔。
「ゆりちんドジだから~、ドリンク作ってたら
溢して自分のジャージびしょびしょにしちゃって~。
このままだと風邪引いちゃうし~。聞いてみたら
着替え持ってないって言うし~。だから俺のジャージ
貸しただけだし~。」
隣の敦は、なんの悪びれもなく説明する。
「ね~、ゆりちん。」
小さなゆりの頭をポンポン撫でて言う敦。
こいつが相当ドジなのは知ってる。
「ん…むっくんのおかげで助かったよ、ありがとう」
へらりと笑った顔で敦に返事をするゆり。
俺は盛大にため息をついた。
チラッと周りを見てみれば、普段からモテるゆりが
こんな格好してたら…そりゃぁ注目の的ってわけで。
俺はいてもたってもいられなくなって、気付けば
持っていたドリンクを敦に押し付け
ゆりの手を攫って歩き出していた。
すると、すぐに岡村が声をかけて来る。
「おい福井!もう部活開始の時間じゃぞ!」
でも、俺は振り返ることなく、
「あぁ、ちょっと出てくるわ。なるはやで戻っから」
先ほどのように言葉を残して今度こそ
体育館を出て行く。
「ちょっ…健!?」
困ったように声をかけてくるゆり。
「いいから…ちょっと来い!」
ゆりと目を合わせることなく歩みを進める。
「あ…岡村くん!すぐ戻るから!」
ゆりはそう言い残して俺に手を引かれるまま着いてくる。
俺が眉間に皺を刻んだまま向かったのは、
校舎のすぐ側にある男子寮。
普段はもちろん女子の立ち入りは禁止。
しかし、この時間なら部活をサボっていない限り
他の人間はいない。
俺はまっすぐ自室へと向かう。
「ちょ…寮は女子立ち入り禁止じゃん!」
慌てふためくゆり。