第4章 嫉妬 【福井】
福井SIDE
ある日の放課後…
俺と岡村は着替えを済ませ、
開始までの時間を駄弁って過ごす。
「しっかし…まだ9月の上旬だと言うのに、寒いのぉ~」
主将の岡村が口を開けば、俺はすぐに返事をする。
「ゴリラでも寒さは感じるのか?」
口角を上げて尋ねれば、隣にいた劉も口を挟む。
「福井、違うアル。アゴリラアル。」
吹き出しながらからかう俺たちを見て、
本人はいつものように「ヒドイ!わし主将なのに!」
と岡村が嘆く。
しばらくすると、体育館に氷室が入ってきた。
「あれ?敦はまだ来てないですか?」
片目の隠れたクールビューティーは俺たちに
尋ねてくるが、確かに今日はまだ体育館には
敦こと紫原は来ていなかった。
「まだ来てないアル。何か用事アルか?」
劉が問えば、氷室は困ったように答えた。
「実は、教室まで迎えに行ったんですが、
クラスメイトが言うには、“ゆりちんに新しい
まいう棒あげる約束してたから~”といつもの
調子で答えて教室を出たらしいんです…てっきり
もう部活に来ていると思って俺も体育館に
来たんですが…」
言い淀んだかと思えば、氷室は俺に視線を送る。
「あん?なんだよ?」
俺が聞けば、氷室はフッと笑って俺に言う。
「そういえば、ゆりさんが見当たりませんが…
彼女もまだ来てないんですか?」
それを言われて俺はハッと気付く。
毎日異常なほどゆりに付き纏う敦。
ウィンターカップが近い今、敦がマネであるゆりと
距離が縮まるのは当たり前だ。
そして今聞いた状況…
「(まさか…)」
俺は焦って立ち上がる。
「岡村、俺ちょっと出るわ!」
そう言い残して体育館を出ようとすれば、
体育館の入り口に見えた人影。
見ると敦とゆりだった。
他の部員からすれば、一見普段の光景。
…俺からすれば内心穏やかじゃねえけど。
でもすぐに部員全員が目を丸くした。
「なっ…!」
俺も咄嗟のことで言葉が出てこない。
なんで…ゆりが敦のジャージ着てんだよ!?
ゆりの小さな身体は敦の図体に合わせた
馬鹿でかいジャージで覆われている。
しかも…着てるジャージがかなりデカイから…
下になにも履いてないようにも見える。