第3章 文化祭 【赤司】
こうして文化祭まで各々が練習をして
本番に臨む事になったのだが…
赤司本人もこの結果には不満を持っていた。
彼女の歌声を回りに聞かせたくはない。
いっそ体調不良と言わせて当日休ませてしまおうかとも
考えたくらいだった。
しかし、部の出し物は毎年恒例で、前回と前々回は
バスケ部が勝ち取っていると言うのだ。
これは、絶対主義者の赤司征十郎にとってみても、
部のためととっても絶対に負けられないのである。
やるからには全力でやって、必ず勝ちを頂く。
ゆりと完全主義の自身がジレンマになるとは
思ってもいなかった。
しかし、時間はあっという間に過ぎてしまうわけで…
ついに文化祭本番となってしまった。
いよいよ出番が近づいてきたというのに、
肝心のボーカルの姿が見られない。
メールも電話も応答なし。
困り果てた赤司は、思い当たる場所を探してみることにした。
屋上、中庭、教室、保健室…どこを探してもいない。
「(どこに行ったんだ…)」
バスケ部総出で探しているのに見つからない。
今日は一緒に登校してきたので、学校にはいる。
上履きも確認済みだった。
でも、見つからない。
最後に思い当たる場所が1つあった。
「あそこか…」
赤司は独り言を呟いて、駆け出した。