第3章 文化祭 【赤司】
「(よし…まず私の勝ちはなくなった!)」
白銀の今までの最高得点は91点代。
黛はおろか、葉山の得点にさえ到達したことはない。
こうなれば自分はもう安全圏だ。
「(この勝負…違う意味で私の勝ちだ!)」
勝手に勝負を決めつけたゆり。
まだ曲を入れていなかったゆりは、
自分が一番好きなな曲を入れた。
前奏が流れ、全員が一度は聞いたことのある曲に顔を上げる。
入れた曲はバラード。有名なセクシーシンガーが
歌っている、失恋ソングだ。
「(これでも最高は90点代…いける!…違う意味で!)」
勝手に勝利(?)を確信したゆりは、
ノリに乗って曲を歌い始めた。
しかし…
「(…あれ?)」
ゆりは、自分以外の全員が目を丸くしていることに
気がついた。
「(もしかして…)」
ゆりの中で1つの最悪の展開が予想された。
「(私…)」
あの赤司でさえ目を丸くして歌を聞いている。
「(よっぽど下手だった?!)」
何が正解なのかわからなくなってきたゆりだったが、
他の5人は、全く別のことで驚いていた。
「「「「「(白銀・ゆりちゃん・ゆりって、こんなに
歌うまかったの・か?!)」」」」」
5人が唖然とする中、曲は終わり、顔面蒼白なゆりが
更に冷や汗を浮かべた。
「あ…あの…?そんなに…ヤバかったですか…?」
コトリとマイクを置いて全員の顔色を伺うゆり。
最初に口を開いたのは、葉山だった。
「いやっ!やばいどころじゃないって!!」
「えぇ!?」
「なぁ、玲央姉!これ一大事だって!」
話を振られた実渕をゆりが見つめれば、
顎に手を当てて考え込んでいる姿。
「(まぁ…カラオケって自己満足だからな…)」
それなりに歌うことは好きなので、
落ち込むゆりだったが、そこで黛が口を開いた。
「おい。得点出たぞ。」
その言葉と同時に全員が画面に釘付けになる。
表示された得点は…
96.85点だった。
ゆりは目が点になった。
「はいぃぃい!??待って!今のなしで!!
なんで!?この機械壊れてますって絶対!!!!」
慌てふためくゆり。