第3章 文化祭 【赤司】
「…名案だな。バスケ部主将の赤司と副主将の実渕。
そして唯一のバスケ部の華の白銀だ。
傍から見りゃあ誰も文句は言わないんじゃねえの」
珍しく黛も同意する。
「ちょっと、あんたたちねぇ…」
見兼ねた実渕が赤司に視線を送る。
すると、視線を感じたのか赤司がやっと口を開く。
「…本人の同意もなしに勝手に決めるのは無しだ。
これからスタメン全員でカラオケに行く。
採点勝負で一番点を取れた者がボーカルだ。
異議のあるものはいるか?因みに僕と玲央は
楽器担当で構わない。」
淡々と話を進める赤司。
「(征ちゃんからカラオケに行こうなんて…珍しいわね)」
隣で立ち上がる赤司を見て、実渕も立ち上がる。
「あの…」
おずおずと手を挙げて赤司に質問したのは、ゆり。
「どうしたんだい、ゆり?」
「スタメン全員ってことは、私は行かなくても
いいん…だよね?」
ね?と後押しするように尋ねるゆりだったが、
「何を言っている。ゆりも立派な部員だろう。
しかも部唯一の華だ。行かないことは僕が許さないぞ」
優しく微笑んでいるつもりだろうが、目が笑っていない。
「……喜んでお供します」
半泣きで答えるゆりだった…
もちろん他に異議のあるものはおらず、
午前練習も無事終わったため、急遽カラオケに
行くこととなったのだった。
場所は変わり、カラオケボックスへと入るスタメンと+α。
「(これはっ…絶対勝つわけにはいかない!
いやそもそも勝てると思ってないけどっ!)」
顔を真っ青にして最後尾を歩くゆり。
それに気付いた実渕が声をかける。
「ちょっとゆりちゃん、顔色悪いわよ?」
その言葉にビクッと反応し、ゆりは
慌てて背筋を正した。
「いやっ!大丈夫です!」
今できる精一杯の笑顔を返すゆり。
「そお?」と言ったきり、実渕は追求しなかった。
「(こんな顔…征ちゃんに見られたら殺されr…)」
実はゆりはカラオケは趣味だが、大勢の人の前で
歌うことは大の苦手であった。
「(とにかく分からない程度に音程を外しまくって、
さりげなく逃れてみせる!)」
違う意味で意気込みを見せる彼女に逆に不信感を
持つ者はいなかった。