第3章 文化祭 【赤司】
赤司征十郎は、珍しく頭を抱えていた。
「(参ったな…)」
今日も厳しい練習後の体育館で
彼を悩ませている状況と言うのが、
赤司本人の通っている高校である、
洛山高校の文化祭である。
それは遡ること数時間前の休憩時間…
この文化祭の話がぽろりと浮上したのだ。
「出しもの困ってるなら、毎年恒例の
ライブに出ればいいんじゃないの?」
葉山の突拍子もない一言から始まった。
「…?」
「え…」
「ライブだぁ…?」
「………」
「ほ…?」
他の居合わせた部員たちも目を丸くした。
「だ~か~ら~、出しもの困ってるんだったら、
ライブに出て、さらっと部活賞もらっちゃえばいいじゃん!」
ボールを器用に回しながら葉山は続ける。
「だってなにしたっていいんだし、
どんなジャンルでもいいんしょ?毎年やってる
ライブに出るのが一番てっとり早くない?」
すると、主将の赤司が口を開く。
「確かにそれが一番早い気もするが…
誰が何をするのかまで考えて言っているのか、小太郎?」
それを聞いた葉山は、来た!と言わんばかりに
表情を輝かせる。
「それはもう、赤司がバイオリン、玲央姉がピアノっしょ!」
確かに楽器を嗜む2人だが、それではライブといっても
いまいち盛り上がりに欠ける。
「そんなんじゃ盛り上がんねえだろ」
口を挟んだのは黛だ。
「ぃよおぉし!!!ここは俺が一肌脱いで、
筋肉マッスルの歌でも披露して…」
根武谷が言いかけたところで実渕が鋭くツッコむ。
「アンタの歌なんて、聞いた瞬間お客さん即退館
しちゃうじゃない!!却下よ却下!!」
そこまでハッキリ言い切られると、根武谷も言い返す
言葉もないのか、口を噤んでしまった。
すると、首を傾げて再び葉山が口を開く。
「なんで~?みんな、ここに洛山のアイドルが
いるじゃ~ん!!!」
葉山は自分の隣に立っていたゆりに視線を送る。
「え!?私ですか?!」
いきなり視線を送られて驚くゆり。
すると実渕が慌てて静止に入る。
「ちょっと!ゆりちゃんは征ちゃんの
ガールフレンドよ!?そんなの無理に…」
しかし、実渕の静止も効かず側にいた
根武谷も、「そりゃあいいぜ!」と意気込み始めた。