第2章 看病 【火神】
なんだか今日はこいつに振り回されてる気がする。
…本人は自覚ねぇんだけど。
足を崩して髪を乾かし始めたゆり。
ワンピースみたいになってるから、見えないものの、
俺の目線はこいつのあちこちに行ってしまう。
(だあぁ!何見てんだ、俺は!!)
我に返ってすぐに背を向け、ベッドに横になる。
しばらくドライヤーの音が鳴っていたが、
それも止まり、背後に感じるゆりの気配。
マットレスが僅かに音を立てて沈む。
「大我…?もう寝ちゃった…?」
そっと俺の肩に触れる指先は熱かった。
「…起きてるよ。」
緊張を悟られないように答えれば、
背後でクスッと笑う声。
「ねぇ…?こっち向いて?」
「向かねえよ」
「どうして…?私の事、嫌い?」
寂しそうに尋ねるゆり。
「…嫌いとかじゃなくて。その…我慢、
できなくなる…だろ」
途切れ途切れに言えば、またクスクスと笑う声が聞こえた。
「ね…我慢、しなくていいよ?」
そっと俺の二の腕を指先で撫でるようにして
ゆりが言う。
その声を聞いて、色んな葛藤はあったが
ゆっくり振り返ってこいつの顔を見れば、
こいつはふわりと微笑んで見せた。
「…煽んなって」
そう一言呟いて一気に引き寄せ、唇を奪う。
「んんっ…」
すぐに自分の舌でゆりを撫でれば、薄く口が開いた。
舌を滑り込ませ、優しく舌を絡める。
「んぁ…」
キスの合間にゆりの身体を組み敷いて
上から覆い被さる。
優しく舌を絡めて髪を掻き上げてやれば
すぐに俺の首に優しく腕を回して
抱きしめてくれる。
ゆりの心臓が高鳴っているのが直に伝わってくる。
緊張してるのは俺だけじゃねぇんだなって思うと、
目の前のこいつが無性に愛しく感じた。
やっとお互いの唇が離れると、2人の間に
銀糸が名残惜しそうに糸を引いた。
「お前…ほんとかわいいな…」
普段は恥ずかしくて言えないことも
簡単に出てくる。
「…かわいく…ないもん…」
か細い返答に、自分の目尻が下がるのがわかる。
「それがかわいいって言ってんだよ…」
額を撫でてやれば、まるでネコのように
うっとりと気持ちよさそうに目を細めた。
そんな顔を見てるとこっちもなんだか安心する。