第1章 【仁王雅治】会えない時間
翌日。
ベッドから出たくなくてずっと布団に包まっていた私。
気がつくと辺りはもう真っ暗になっていた。
携帯は一度も鳴っていなくて、今も静かにテーブルの上にある。
(雅治……)
自分から連絡するにも怖くて出来なかったんだ。
もしまた「忙しい」とか「後で」とか返ってきたら……もうこの辛さに堪えられなくなると思ったから。
だから何もしないでいたわけだけど……やっぱり送ってみれば良かったかなと思う。
(ねぇ……今何してるの……っ)
電気もつけずに膝を抱える私。
一応用意しておいた雅治へのプレゼントも……今は机の中だ。
これで本当に連絡がなかったら虚しくてたまらない。
もしかしたら別れる前兆かもとまで考えてしまうから余計に辛くなる。
もうクリスマスはどうでもいいから……私の携帯を震わせてほしい。
「!!」
そんな時、願いが叶ったのかメールの受信音が部屋の中に鳴り響いた。
私は直ぐさまベッドから飛び降りて確認をする。
気持ちが先走って手元が狂うけど、少し時間をかけてなんとか受信ボックスまで辿り着いた。
【外に出て来んしゃい】
(雅治……!)
大好きな人からのメールってだけで胸が騒ついたのに、今自分の家の前にいるの?と思うと心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。
私は慌てて部屋着に上着を羽織り、そのままの格好で玄関を飛び出す。
「えっいない……雅治……?雅治!」
「ここじゃ」
なのに姿が見えず、声が聞こえた方を見てもいない。
私は今すぐにでも雅治に会いたいのに、なかなか出てきてくれなくて不安で泣きそうになる。
よく私をからかったりするような人でもあるけど……今はやめてほしい。
「ねぇっ……雅治どこ……っ」
「ここぜよ」
「っ……まさはっ……」
「なに泣いてるんじゃ、お前さん」
堪えきれずに涙を流してしまったと同時に、私は後ろから雅治に抱きしめられた。
久しぶりに感じた彼のぬくもりと香りで、私の胸はいっぱいになった。
でも自分の口から出てくるのは全く可愛げのないものばかり。