第1章 【仁王雅治】会えない時間
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季節はもう冬。
後少しすればクリスマスというイベントが待っているという……そんな時期。
私には付き合っている人がいて、クリスマス当日はその人と素敵な夜を過ごしたいななんて考える。
一緒にケーキを食べたり、イルミネーションを見たり、プレゼント交換してみたり……と。
まだ日にちはあるのに、私の頭の中はそればっかりでちっとも退屈しない。
お陰で時間が過ぎるのが早く感じ、明日がそのクリスマス。
けど……
「雅治!明日はさ!クリス、」
「あーすまんちょっと忙しいんじゃ、また後でな」
「あ……うん……」
彼氏の雅治は全然相手にしてくれない。
いつもいつも「すまん」「また後で」と言って私から去っていく。
折角色々考えていたのに、彼の素っ気ない態度のせいで一気に気分はドン底だ。
これではまさかのボッチかもしれない。
彼氏がいるのに。
「はぁ……いいなぁ……」
クリスマス本番でなくても鮮やかな夜の街。
手を繋いで寄り添いながらイルミネーションを見ているカップルを見ると胸が苦しくなった。
私も雅治とああやって一緒に見たい。
手を繋ぎたい。
……一緒にいたい。
最後2人で帰ったのはいつだっただろうか。
もはや思い出せない。
「おや?さんじゃないですか」
「柳生くん……」
「どうしたのですか?こんな寒い中お1人で」
「ちょっと……ね」
心が潰れてしまいそうな時に現れた柳生くんを見ていると……何故だか涙が込み上げてくる。
私を気にかけてくれる彼には申し訳ないけど、今目の前にいる柳生くんが雅治だったら……と考えてしまう。
でも雅治はいない。
私の側にいない。
「っ……」
「さん……?!どうしたのですか、泣かないでください……」
苦しくて苦しくて……いっそこのまま死んでしまいたいとまで思った。
雅治がいなきゃ意味がない。
私はこんなに好きなのにどうして……。
別に重いと思われても構わない。
だってそれくらい寂しさが募っているから……。