第1章 【仁王雅治】会えない時間
「指輪……?」
「俺は部活でつけられんから代わりに名前を掘ってもらった」
「ほんとだ……雅治の名前が入ってる」
「俺がこいつを贈った意味……わかるじゃろ?」
これでわからない筈がない。
ペアじゃないとしても、この指輪から「お前が好きじゃ」って雅治の声が聞こえるような気がする。
暗く考えてしまっていた自分が恥ずかしい。
「うんっ……ありがとう……っ」
「また泣くんかお前さんは」
「だって……っ」
「まあ放っておいた俺も悪いからの……今日はその分埋めてやるぜよ」
もう私の心は満たされて、とても幸せな気持ち。
でも雅治はまだプレゼントをくれる。
自分んちの玄関先にも関わらず……辺りの寒い空気をあたためるくらいの熱いキスを、私達は交わし合った。
「なんじゃ、やけに積極的じゃのう」
「ダメ……?」
「そうじゃな」
「どうして……?」
「まあ俺に任せんしゃい。先ずは家に入れてくれんか」
この後雅治とどういう展開になるのか想像してしまった私。
まだお互い中学生だけど、彼の事は大好きだからしても構わないと思う。
でも怖い。
私には経験がない。
耳にする情報はどれも「最初はもの凄く痛い」という事ばかりだったから……私にとって身体を重ねるというのは恐怖のが大きかった。
「そう緊張しなさんな」
「わ、私した事ないから……」
「ん?何をした事ないんじゃ?」
ベッドに腰掛けて、この状況違うの……?!
と、自分だけがいやらしい事を考えていたのかと恥ずかしくなる。
けど他に何かをするような雰囲気でもない。
「クククッ……正解じゃ」
「へっ?!」
「お前さんが考えてた事であっとるぜよ」
ああまた雅治にからかわれた……。
この人はそうやって私の反応を見て楽しんでる。
けど嫌じゃない。寧ろ今は嬉しい。
「雅治っ!」
「どうしたんじゃ抱きついたりして」
「大好き!」
2人で過ごせなかった時間が、きっと今の幸せを作り出してくれたのだろう。
別れるかもとか考えてごめんなさい。
死にたいなんて思ってごめんなさい。
「ああ、俺もじゃ」
こんな私だけど……これからも沢山愛をください。
雅治の愛を私に下さい。
全部全部受け止めて……大切にするから。
終