第3章 地獄の練習
はるがボールを空中にあげた。
キュルキュルキュル!
ボールが高速回転している。
先輩たちの顔は、みな訝しげだ。無理もない。
はるのサーブを知らないから。
はるの手があがり、パァン!とボールを打った。
キュルキュルキュルキュル!
急速回転しながらボールはネットを越える。
軌道はまっすぐに藤川先輩のいるところに向かっている。
ぐっ、と足を踏みしめる音が聞こえたような気がした。
ボールが藤川先輩の腕にあたり、ドンっ、と鈍い音がした
先輩は、かろうじて返す動きをしたが、ボールは回転の影響で、コートの外にはね出てしまった。
先輩たちは、みな動きをとめた。藤川先輩さえも目を見開き、口をつぐんでいる。
窓を開けた体育館に、冷たい風が吹き抜けた。
はるをにやにやした顔でみると、はるもにやにやを返してきた。
「すっげーーーー!!!!」
藤川先輩の声が体育館に響き渡った。