第3章 地獄の練習
「交代!」高木先輩が声をあげる。
もうちょっと返したかったなぁー。
そう思いつつも、ネットをくぐって、エンドラインの後ろに立った。
ボールを持ち、バウンドさせる。
ダン、ダダン、ダン、ダダン、ダン、ダダン
立花先輩とはるもボールをバウンドさせ始めた。
ダダン、ダダダン、ダン、ダダン
不規則な音が地面を振動させる。
右手を上、左手を下に、ボールをはさみ持つ。
私は一つ息を吐く。
ボールを持った左手を上に掲げ、体を横向きにし、左足を前に出す。
右腕を後ろに引き、折り曲げて、右手をボールに向かって開く。
左手でボールを上げる。
パァン
右腕を振り下ろした。勢いで体ごと前を向く。
ボールは直線で進み、ネットを越し、コートの真ん中に進んでゆく。
バン
高木先輩がボールを返した。
ボールは弧を描いてコートの真ん中に落ちる。
ダン
私はホッと息をついて、他のボールを取る。
パァン
バン
音に振り返ってみると、どうやら、立花先輩のサーブを、福原先輩が返したようだ。
私は二人のところに戻る。
次ははるの番。
はるがボールをバウンドし続ける。
ダン、ダダン、ダン、ダダン、ダン、ダダン
見ているうちに、なんだかニヤついてきてしまった。
はるが構える。はるの目がいつもと少し違う。
先輩たちは、はるのサーブをどう受けるのか。やはりニヤニヤがとまらない。
はるはきっと、最初から先輩たちの目を見開かせるつもりだろう。口角が少し上がっていた。