【進撃の巨人】 never ending dream R18
第31章 永久に碧く~月の歌~
父が肌身離さす持っていたいと言っていたループタイ。
それはクレアからの贈り物などではなかった。
それは…
亡き母からの贈り物。
私の母からの贈り物だった。
父は…母の想いが宿ったループタイを身にまとい、これまで生きてきたのだ。
いつも仮面を被ったような無表情の父。
そんな父の心に、母の姿はもう無いのだとすら思った事もあった。
父の心に母はいた。
ただただ、胸が張り裂けそうだった。
それと同時に…私は幼い日の母の記憶を思い出した。
「…どうして、今まで忘れていたんだろう。」
夜空に輝く片割れ月を見上げながら、私はそうつぶやく。
「…ガビサンゲツ ハンリン ノ アキ…」
幼い頃、母がよく詠っていた詩だ。
それは決まって父が壁外調査に向かった日。
台所の窓から月を見上げ、母は涙をこらえ、必死に詠っていた。