【進撃の巨人】 never ending dream R18
第28章 永久に碧く~初陣~
屋上の扉を開けると、青白い月明かりの中、建物の縁に腰を下ろす1人の兵士の姿があった。
見慣れた後ろ姿。
血で汚れながらも、力強く羽ばたく自由の翼。
その傍らには葡萄酒のボトル、そしてなぜかグラスが2つ並んでいた。
「…父さん?」
父は私の存在に気付かぬまま、空高く昇った月をじっと見つめていた。
父はグラスを手に取り、葡萄酒を一気に飲み干す。
もう片方のグラスには手を付けず、空いたグラスに再び葡萄酒を注いだ。
初めて見る父のその姿は、いつもの非情で冷酷な父とは違い、わずかに人間らしい弱さが滲み出ているように感じた。
ゆっくりと月を見上げ、父は優しく穏やかな口調でこう言った。
「あの時…君をひとりにしてしまった事を、今でも後悔している。
いつか償いが出来るといいんだが。」
まるで月に語りかけるようなその言葉。
父にも救う事の出来なかった“仲間”がいるのだろうと思い、私は静かに扉を閉め、屋上を後にした。