【進撃の巨人】 never ending dream R18
第19章 咽び泣く~居場所~●
父が再びシガンシナ区へと向かったその日の夜、弟は高熱を出した。
「かーさん、かーさん。」と、弟はうわ言を繰り返し、原因不明の熱が何日も続いた。
その間、弟は常駐の医師の判断により、医務室での生活を余儀なくされた。
弟の側を離れたくないと、私は父に訴えたが、父がそれを許す事はなかった。
弟がいない間、必然的に…私は父と毎晩ふたりきりで過ごす事となる。
“父のいない生活”から“父しかいない生活”へ…。
父は私のためにと、寝る前に絵本を読んでくれた。
しかし、今まで一度もそんな事をされた覚えがない私は、抑揚のない声で、淡々と絵本の中のオオカミの台詞を読む父が何だかくすぐったく感じ、早々に眠くなったふりをした。
私のためにと買ってきてくれた可愛らしい部屋着でさえも、私は着る事を拒み、父の大きなシャツを着続けた。
今まで離れていた時間を埋めるかのように注いでくれた愛情を、私は素直に受け取る事が出来なかったのだ。
本当は…父に甘えたかった。
しかし、私は慣れない父との距離感に戸惑い、上手に甘える事が出来ない。
父の香りがするシャツを身にまとい、眠ったふりをして父の腕に抱きつく。
それが私の精一杯だった。
今思えば、父とふたりきりで過ごしたのは、あれが最初で最後だったはずだ。