【進撃の巨人】 never ending dream R18
第18章 咽び泣く~親を夢む~●
私が生れたのは、とても寒い冬の日の朝だった。
前日から降り続いていた雪のせいもあり、普段であれば積雪に見舞われる事のないシガンシナ区も、辺り一面を白銀の世界が覆ったという。
思いがけない雪の影響は、この狭い壁の中で暮らす人々の生活を直撃し、出産の知らせを受け、ウォール・ローゼ内の調査兵団本部で暮らす父がシガンシナ区へと帰宅したのは、私が産まれてから4日後の事だったそうだ。
産着にくるまれた私を見るなり、父は大粒の涙を流したと、5歳の誕生日に母は話してくれた。
しかし、物心付いた時から、毎日の生活の中に父の姿は無かった。
シガンシナ区にある小さな家で暮らす私達のもとへと、父が帰って来る事はほとんどない。
それは、3歳下の弟が産まれてからも変わる事はなく、年に数回しか帰る事のない父に、愛情を感じていたと言えば嘘になるだろう。
時おり、私達が眠りについた後、台所で涙を流す母を見た。
今思えば、その日は調査兵団が壁外調査へと向かった日だったのだろう。
私達に悟られぬよう、声を押し殺して泣き続ける母の後ろ姿を見て、私が守らなければと強く思ったのを覚えている。
“父さんがいない間は、母さんも弟も、私が守らなきゃ。”
そんな事を…思っていた。