第1章 短編集
「名前チャン、オレがいなくなると寂しいかヨ?」
「そ、そんなことはない・・・です」
私の顔を覗き込む。
ホントこの人のこーゆーとこ嫌い、好きだけど。
笑えてるかわからないけど、とりあえず笑顔を荒北さんに向けてみた。
「嘘クセェんだよ、その面」
「ど、どういう顔ですかソレ・・・」
涙目になってきた。
この人と走れるのももうあと少し。
この人と一緒の学校に通えるのもあと数か月。
「・・・遠くても良いワケ?」
「・・・へ?」
オレ、気持ちとか全然ワカンネーケド・・・。
名前チャンは遠くてもいいかヨ?
と聞いてくる荒北さん。その目はこちらをずっと見ている。
「それ、どういう・・・」
「・・・え?まだわっかンネー?」
強く握られた手が、するすると下に移動する。
今度は指を絡ませ、優しく握られた。
「・・・これでわかるかァ?名前チャン」
その手を顔の前にやり、私の手の甲に軽く口付ける。
その姿をみて、私はとうとう涙を流した。
遠距離恋愛なんかした事ねェし、女ごころなんて全然ワッカンネーから怒る事よくあるかもしんねェけど?
と前置きを言う荒北さん。
「ま、オレ達らしくやってこーぜェ、名前チャン」
「・・・っ、は、はい・・・っ!」
その後愛車に乗ってやって来た東堂さんと新開さんがやってきて泣きじゃくっている私と荒北さんを見て泣かせただの名前ちゃんと恋人繋ぎしてる心底うらやましい死ねコノヤロウと罵倒されつつ皆からよかったねとかおめでとうとか祝福されたのはすごくうれしかった。
後日、新開さんから聞いた話だが私が入部した当初から
「靖友はおめさんの事好きだったんだぜ?」と聞かされてそれとなく本人に聞いてみるとみるみる内に顔が真っ赤になり「新開だな、アイツブッ飛ばす!!!」と新開さんを飼育小屋まで追っかけて行ったのはそっとしておこうと思う。
end.