第1章 短編集
「あの、申し訳ないんだけどさ」
「なんだ?」
「足くじいて歩けそうにないから肩貸してくれない?」
「あ、あぁ、構わんよ・・・」
肩を貸すため腕を掴んで立たせてやるとひょこひょこ歩く。
これで肩を貸しては足に負担を掛けるだけなのでは?
と思い、どうしようか悩みに悩んだ末思い切って名前の膝に腕を入れ、お姫様抱っこをしてやった。
重いから大丈夫だと喚く名前にこれ以上負担を掛けてもよくないからときちんと理由を説明しつつ、保健室へと向かう。
あぁ、心臓が破裂しそうだ。
どうかもう少しだけ、邪魔が入りませんように。
次の日聞いてわかったのだが、結局その日にフクが部室の鍵を見つけたらしい。
名前に電話をして見つかったと話してたぜ、と新開が言っていた。
ふと疑問が残る。
フクから電話がかかってきていたのは名前が足をくじく少し前だ。
あの後名前と一緒にいたから、フクから電話がかかってきていたのはあれきりだ。
なぜ名前があの時点でまだ鍵が見つかっていないと言ったのか。
・・・。いや、そんなまさか。
とりあえず、色んな意味で名前にはまだ黙っておこう。
そしてフクに感謝しよう。
あぁ顔が熱い。
end.