第1章 短編集
雨の日の告白
確かに気になっていた人ではあるが、そもそもそんなに話したことがない相手と二人きりになったらどうなるか、なんてこんな分かりやすい質問はないと思う。
答えは
無言になる、だ。
ザァザァとにわか雨が降っている現在、私は近くの公園にある屋根付きベンチで雨宿りをしていた。
この公園には雨宿りが出来そうな場所はここにしかない。
寮からほど近いこの公園までの道のりも雨宿りに適した場所はないのだ。
この雨が降ってもう5分ほど経つだろうか。
それまでは割と晴れた空だったが学校から寮に帰るにつれて雲行きが怪しくなり、あと5分ほどというこのタイミングでバケツをひっくり返したような雨が降ってきたのだ。
学生鞄で凌げるような雨ではなかったようで制服はべたべた、ちょうど衣替えのこの時期に朝珍しく暖かかったので夏服で来てしまった。
おかげで寒いし透けて下着が見えてしまっている。
今日雨降るなんて天気予報で言ってなかったし・・・と思いつつ雨でぬれた体を抱くようにし暖を取りつつ下着を隠したががどこもかしこも濡れているのであまり意味もなさそうだった。
そしてここからが問題なのは私がここにきて1分も経たないうちにこのベンチに雨宿りをしに同じクラスの荒北くんがやって来た事だ。
もちろん、冒頭で述べた通りそんなに話したことはない。
ましてや二人きりなんて、心臓が持つかしらと考えつつ空を見上げた。
相変わらず5分前とは変わらず雨は衰えなく降り続けている。
いつまで続くのだろうか、この雨は。
いっそあと5分程度の距離なので走ろうかなどと考えていた時だった。
「あー・・・苗字サン?」
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