第10章 カミングアウト
「ちょっと待って。うちはイタチと組んでたってことはそのジンクス怪しいんじゃない?言っちゃ悪いけどー」
「組んでた人の実力不足って?」
皆が浮かべたであろう疑問を口にしたアンコに被せ気味にさゆが答える。
その目は軽蔑や咎めるようなものではなく、少し悲しそうで、だからか余計にその先を口にするのを憚られた。
「確かに…もしかしたらそうなのかもしれません。でも、上忍であったアミツキ先生たちや暗部の中でも手練れだったカツミさん達が亡くなった現場で、ヒヨッコの私だけが生き残ったことがどうしても受け入れられないんです…。なのでこれは私のわがままです。これ以上、私と組んで死ぬ人を見たくない。」
さゆは終始前を見つめていた。だがその目は誰を映しているというものではなく、漠然と空を見ている様だ。
「はいはい、話がズレてるよ。」
「あ…すみません。」
息が詰まりそうな空気をカカシ上忍がパンと手を叩き軽くする。さゆはハッとすると今度はちゃんと、俺たちを目に映した。
「2つ目、ですね。」
気を取り直そうとかさゆがふうっと一呼吸入れる。目を伏せ、言葉に悩んでいるようだが、もう一度息を吸うと意を決したように目を開いた。
「2つ目。私はうちはイタチと交際していました。その為、現在繋がりの深かった私がサスケくんを引き取っています。」
カカシ上忍が手を叩いたことで少し空気が軽くなった為もあるがさすがにこれにはその場がどよめいた。
カカシ上忍から一瞬の殺気が漂ったあたり本当なのだろう。
「だから彼が接触してくるとしたらまず私かサスケくんの可能性が高い。その時はサスケくんのことを皆さんに守ってもらいたいんです。またイタチくんが木の葉に近づいた時には真っ先に私に知らせてほしいんです。お願いします…」
さゆが深々と頭をさげる。
何人かが「わかった」「ああ」と了承の言葉を口にする。