第14章 帰還
腕に収まるその身体を、熱を、ひどく愛おしいと思った。
生きてた。
分かってはいたけど。
こうして抱きしめることでさゆがここに存在してくれていることを実感する。
自分の心臓の音が聞こえるかのようだった。
脳へと血が巡り、気分が高揚しているのが分かる。
さゆはどうなのだろうか?
このドクドクとした振動が自分ものかさゆのものか、わからなかった。どうでもよかった。
どのくらい、そうしていたのだろう。お互いの身体を包み合うこの状態が心地良くて、それだけでよかった。
「ゲンマさん、そろそろ…」
「あと5分。」
「二度寝じゃないんだから。」
文句を言いながらも突き放す様子はなく、ホッとすると同時にもう少しきつく抱きしめたくなった。
もっと密着したい。
存在を確かめたい。
柔らかな髪に手を通す。
さゆの肩に自分の顔をのせるように引き寄せれば視線がこちらへと向けられる。
日は完全に落ちていた。
静かな闇の中、触れ合うところだけが暖かい。
どちらが先か、
目が合ってすぐにそれを閉じた。
冷たい空気を吸った唇がゆっくりと熱を得る。