第2章 ことのはじまり
静かな森の奥。鳥が鳴く声が響いている。
私たちはいま木の上から森の様子を観察していた。まだ外来種と思わしき動物は見当たらない。
外来種は巨大な黒いクマらしい。
火の国のクマはここよりもいくらか東側に生息しているのだが、件の外来種はそれをいいことに今私たちのいる一帯に住み着いたようだ。
「いないな。足音ひとつしない。」
スズミが二つ隣の木で目を凝らしている。
「油断するなよ。お前たちの身長なんて軽く超えてるぞ。」
横目でスズミを見ながらアミツキ先生が優しい声でいった。
普通の熊でさえ私たちの身長を優に超えているだろう。
それよりも大きなものを想像するとゾッとした。
スズミがごくりと唾を飲む。
その直後、静かだった森に爆発音が響いた。
「トラップにかかったな…。いくぞ。」
アミツキ先生の声に答える代わりに一斉に爆発音がした方へと飛んだ。