第9章 新しい生活
「なんできてくれないんですかぁー!」
「お前こそなんでそんな嫌がるのよ。」
「いや、まぁ、なんとなく…ですけど…」
「まぁ…わからなくもないけどね。お前はほとんど限られた人しか関わってこなかったし。」
頭にポンと手を置くとさゆは図星のようで俯いて何というか悩んでいるようだった。
久々だなこの距離。
さゆは昔の面影は残っているけれど、俺と離れていた数年でぐんと大人っぽくなっていた。まだ10代とはいえ、受付の様子を見る限りでは周りの目を充分に惹いている。
さゆをこんな風にしたのは俺じゃない。
イタチだ。
イタチに会ってからさゆは変わった。他の奴からは分からないかもしれないけれど。
そう思うとどこかもやもやして、それでも彼女が笑顔でいるならそれでいいと思った。
なのに…
「カカシさん?」
さゆが不安げにこちらを見上げてくる。
ああ、この感じも久しぶりだな。
「ああ、悪い。いやだからさ、俺としてはお前の世界を広げて欲しいと思うわけよ。今ならオレもついてるしさ。紹介するから。」
「……はい…」
嘘はついていない。
過去のことから無意識に避けてしまっているようだがさゆにはもっと多くの人との繋がりが必要だ。
こんな事を言っては怒られるかもしれないが、俺としては早くさゆからイタチの記憶を薄めたかった。
頷くさゆの頭をもう一度撫で、「じゃあ入ろうか?」とドアに手をかけると袖を引かれる。
久しぶりだと心臓に悪いなこれ…
「今日じゃなくていいんで、今度また別の日、話せるときありますか…?ちゃんと、カカシさんに話しておきたいことがあって。」
「わかった。オレもお前と2人でゆっくり話したいから。夜だとサスケのこともあるだろうから、また別の日の昼休みに会おう。」
さゆは少し安心したように笑うともう一度腕を握ってくる。
何これこのかわいいやつ。
俺も笑顔で返すと今度こそドアを開けた。