第8章 決起
「やっぱり今日なんかおかしくない?」
甘味屋を出て近くの丘をふらふらと散歩していたとき、さゆさんに顔を覗き込まれた。
「なんか上の空っていうかさ。最近クマも酷いよ?なんていうか疲れてるっていうか。」
「そうですか…?」
「うん。ちゃんと寝てる?」
さゆさんは俺の小さな変化でも結構よく気づく。自分のことを見ていてくれるのは本当に嬉しい。
でも、だからと言ってこれから起こることを、起こすことを言うわけにはいかない。
「最近地味に疲れているというか、そんな感じです。」
「そっか。」
あからさまにはぐらかすような答えを返せば、それ以上問い詰めることはせず、頑張ってるねと頭を撫でてくれた。
この手にすがりついてしまいたい。
この人に思っていることを全部言えたらどんなに楽だろうか。
だが逃げることはできない。
自分がやらなければいけないことがある。
自分にしかできないことがある。
望んだことではないがこれは自分で決めたことだ。