第7章 後ろの少年
「あ、着替えわかった?」
「はい。ありがとうございます。」
長い髪を濡らしなが肩にバスタオルをかけたイタチくんがふらふらと出てきた。
私にはすこしゆるゆるの服はイタチくんにはちょうど良かったようでホッとする。
はじめ道で会った時よりはいくらかマシになったように見えるな。
「おいで。ソファー座って。」
イタチくんが言われるがままにソファーに座ると、後ろからタオルで荒く水気をとり髪を乾かす。
イタチくんといえば終始うつむき、されるがままだった。
「さゆさん。」
髪さらさらだなぁとぼんやり思っていると、名前を呼ばれた。
「なに?」
「何も…聞かないんですか…?」
「うーん…。まぁ気になるけどね。聞いてほしい?」
「…聞いてほしいと言えば聞いてほしいかも知れません。でも…聞いてほしくないと言えば聞いてほしくないです。」
「そっか。」
自分の頭の中で彼にかける言葉を探した。
何て言えばいい?
何て言ってほしい?
気が利いた言葉は言える気がしない。
部屋の中にはドライヤーの音だけが響いている。
「よしっ終わり。」
乾かし終わり、一度だけ、その髪に手を流した。
「イタチくん。私はできるだけイタチくんの力になりたいと思ってる。私にできることなら何でも協力する。
でも何もできそうにないなら何もしないし聞かない。何もしないかわりにずっとそばにいるから。何も言わなくていいから。いつでもフラッとおいで。」
「……はい。」
「よろしい。」
頭をわしゃわしゃと撫でるとまた手を引いた。
「もう寝よ。」
「えっちょっ」
「こっち。」
リビングと隣接してる寝室へと連れて行く。
「オレ、男ですよ。」
「ほぅ?」
「お年頃ですよ。」
「襲っちゃう?」
「いいんですか?」
「お年頃はちゃんと睡眠とらなくちゃ身長伸びないよ。」
ぐいぐいと布団に連れ込み布団を被る。
「ふふっちょっと狭いね。」
「さゆさん風呂はいいんですか?」
「明日入るよ。そういえばイタチくんお家へ連絡しなくて平気?」
「あぁ…朝一で帰りますよ。」
「朝帰りだね。」
「カカシさんに見られたら怒られそうですね。」
「ふふっそうだね。」
「さゆさん。」
「なに?」
「抱きしめてもいいですか?」