第5章 血の丘の月
血の匂いがひどい。
幻術が使えるという事で引き離されて敵と戦っていたが、何とか勝利し戻ってくればそこは骸の山ができていた。
自分が離れていたのは長くても20分ほどなはず。
見覚えのある服を着た腕が山の途中から生えている。恐らくこれはカツミのものだ。
「酷いな……」
足に力を入れ死体の山を登る。
頂きに立つとしゃがみこんでいる人を見つけた。
高澤さゆ……
入隊したときに聞いた噂。
「彼女と同じ小隊になると殉職する。」
どうやら本当だったらしいな。
ではなぜ自分は生きているのだ。
まだ敵の残党でもいるのかと思い気配を巡らせるが他には誰のチャクラも感じない。
彼女を見下ろすと放心し、虚ろな目でこちらを見上げていた。
絶望しきった瞳。
今まで見た中でも暗く深いその虚無に胸がざわついた。
同時に自分の存在を、自分がうちはイタチだという事をようやく理解したのか彼女の瞳が少し生気を取り戻した。
「イ…タチ……くん……?」
視線が交わる。
儚げな彼女から目がそらせず、ただコクリと頷いた。