第5章 血の丘の月
森は静けさに包まれていた。
これから起こる事への各々の緊張が満ちている。
いや、満ちていた。
今では全てが終わっている。
私の足元にはミカゲ、少し離れたとこに見えている手はきっとカツミだろう。
2人はもう死んでいる。
2人だけではない。
今回この任務に関わった忍が死体の山となっている。
予想通りだった。
今までと違うのは、実力は五分五分、中々の接戦であったということだ。
ただ結果的に2人は死んだ。
途中からイタチの姿を見なくなったがきっとこの山のどこかにいるのだろう。
残った敵は自分が殺した。
例によって、例の如く、医療忍術を利用して。
「……巻物はどこかな…」
帰ろう。
思ったより冷静な自分がいた。
なんだ。なんだ。
覚悟していたらなんともないじゃない。
遠くでカツミが殺られるのが視界に入ったときも、目の前でミカゲが事切れたときも、『またか』という思いが先に浮かんだ。
あぁ、でも、何だろう。
この虚無感は。
そして確信したことが一つ。
噂は本当だったね。
何となくカカシさんの事が浮かんだ。
ただでさえ最近、余りまともに会話をできてなくて気まずいのにどんな顔して合えばいいんだろう。
この任務の事を知ったら心配してくれるのかな。
でも私にはカカシさんに心配して貰える資格なんてないよ…。
すっと月明かりが陰るのを感じた。
誰だろう。
もう、誰でもいいや。