第5章 血の丘の月
「なんで………」
「俺は引き離されて少し遠くで戦っていました。」
「そう………そう……!」
彼女がすがりつくような笑顔をしたがすぐに険しい顔になった。目を閉じ意識を集中している。
自分と同じように残党がいないか探っているのだろう。
「俺もさっき写輪眼で確認しましたが残党はいません。」
「みたい……だね…」
彼女は初めてのケースに戸惑っているようでここからどうしようかと悩んでいるようだった。
「…機密文書はありますか?」
「あ、うん、まだ…ごめん…」
「いえ、確か茶髪で細身の男が持っていたはずです。探しましょう。」
「うん…いや、まって。文書は私が探すから。イタチくんは先に戻って」
「え?」
「せっかくまだ生きてるのに…里の外でこれ以上私といるとまた何か起こるかもしれないから…」
「……大丈夫です。」
「イタチくん…!お願い!!!…こわいの…!!」
「………なら、さゆさんが先に戻ってください。」
「いや!イタチくんが戻って!」
不毛なやりとりにイラつきを覚える。
きっと何を言っても聞いてはくれないだろう。
はぁ、とため息をつくと一歩近づき目に意識を集中させた。
赤くした目をカッと開くと、彼女はゆっくりと目を閉じ倒れる。
文書を見つけカバンにしまうと気絶してるさゆを肩に担ぎ里へと向かった。