第4章 決意
「カカシさん、カカシさん!」
走って俺を追いかけてくるさゆの声が廊下に響いた。でも今はどうしても話をする気になれない。
腕を掴まれたのでまた振り払おうとするが余計にがっしりと掴まれる。
「カカシさん、こっち向いてください。」
「離してくれ。今、顔見たくない。」
「嫌です。こっち向いてくれるまで離しません。」
舌打ちすると顔だけ軽く振り返る。
今、きっと自分は泣きそうな顔をしているはずだ。こんなところ見られたくない。
「もういいだろ。離してくれ。」
「ちゃんと!目を見て!!」
振り返りながら勢いよく手を振り払う。
「放っておけよ!結局俺には何も頼ってくれないんだろう?!だったらもう構うな!!」
「嫌です!!!私は絶対自分の意思を曲げる気はありません。でもカカシさんには、ちゃんと理解して、認めてもらって任務につきたいんです!!!」
「いらないだろ。俺の理解なんて。」
冷たく言ったつもりだった。突き放そうと思った。だが予想に反して彼女が抱きついてきた。突然のことに驚いている。胸に顔を押し付けたまま彼女が話しだす。
「そんなこと言わないでください、カカシさん。カカシさんは私にとって命の恩人です。それだけじゃない。私が今、こうしていられるのもカカシさんのおかげです。カカシさんがいなかったら私はきっと、生きていても心が死んでた。」
「………………」
「忍でいる限り、お互いいつ死ぬかわからない。今の私にとって、カカシさんは1番大切な人なんです。でも、だから、このままなんて嫌なんです。」
さゆがオレの顔を見上げてくる。なんだ、さゆも泣きそうじゃないか…。
ずっと自分の一方通行なんじゃないかと思ってた。俺ばっかりさゆが大切で、さゆにとってはそこまででもないんじゃないかと思っていた。
こんな時なのにさゆの言葉が嬉しくて気持ちが温かくなる。
余計に彼女を1人にしたくなくなる。
「じゃあ、俺とチームを…」
「それも嫌です。カカシさんとは1番組みたくありません。私と組んだせいでカカシさんが亡くなったら…」
「勝手に殺すなよ…!俺は死なない。絶対に死なないから…!!!」
「それでも、万が一でも可能性があるからには、嫌なんです。」