第3章 無駄な力
血生臭い……。
チャクラを感じる場所へと着くとコンクリート打ちの廃屋に辿りついた。
中へそろそろと入ると血の匂いが強くなるのを感じる。
鼓動が早くなる。
静かにクナイに手を伸ばし、気配を消しながら奥へと進む。
おかしい….
廃屋の中に入ってからは感知するまでもなくさゆのチャクラを強く感じる。
だが他の人間のチャクラが1つも感じられないのだ。
自分の鼓動の音がうるさい。
この血の匂いの元であろう、さゆのチャクラが溢れている部屋のドアに背をつけ中を覗くと思わず目を見開いた。
そこにはあちらこちらに死体の転がる部屋の中央で手からチャクラを溢れさせ、うずくまっているさゆの姿が見えた。
「………さゆ……?これは………?」
呼びかけたが返事がない。
「さゆ…おい、さゆ…」
ゆっくりと近づきもう一度声をかける。
同時にあることに気づいた。さゆが治療しているのであろう人物はさゆの上官だ。
いや、上官だった。
さゆがゆっくりと、酷くやつれた顔を上げた。
「……カカシ…さん…?」
「…さゆ…これは…」
「カカシさん…ダメなんです….血は…止まったんです。でも……動いてくれないんです……」
「さゆ…こいつはもう…」
彼女は首を横に振る。
「まだです…もう少し…」
「さゆ」
「まだ私の技術が足りないから時間がかかっているだけです…!まだ…!あと少しで!」
「さゆ!もう…死んでる。」
彼女は虚ろな目のまま涙を流した。
「でも…だって………あんなに勉強したのに…!あんなに修行したのに…!!!あんなに!あんなに!!!!」
さゆを引き寄せ力一杯抱き締める。
「わかってる!お前があの日からずっと努力してたのは俺がずっと見てたから!!わかってる!わかってるから……!!」
「そんなの意味ない!!!!」
自分の手から逃れようとするさゆをさっきまでよりも力を入れて抱き締める。
ここで離してはいけない気がした。